想像力神話

 想像力があれば、戦争は無くなる。相手の痛みを感じる事が出来るから暴力を振るえなくなる。しかしそれはどうも嘘のようです。
 他人の痛みを感じる事が出来る能力は単に暴力を自傷行為に変えるだけです。真砂が尽きるとも自殺は減らないというわけで、暴力はなくなりません。
 ところで、暴力にも上手い下手があります。上手い人の方が強いというわけではありません。暴力を使い慣れていて加減を知っており、状況にあわせて暴力を使い分ける人が、暴力が上手いといえます。そういう人は幾ら殴っても殺しまではしませんし過剰な凶器も使いません。不必要な暴力は振るわないので無抵抗になっている相手にエスカレートする事もありません。
 暴力が下手な人は危険です。加減を知りませんからいきなりナイフを持ち出したり火をつけたり自分で制御できない暴力を使って悲惨な結果に陥るのが良くあるパターンです。
 想像力で暴力を抑えている人の場合、他人への暴力はそのまま自分への暴力です。そういう場合は当然自暴自棄な状態だと考えられるので、振るわれる暴力は下手な暴力になりやすいのです。
 暴力をなくすというのは一つの理想です。しかし、現実には暴力をコントロールすることのほうが先決です。そのためにはちょっとした喧嘩などの小さな暴力で暴力になれることが必要です。そういう暴力を頭から否定して排除してしまうといつか自分の暴力をコントロールできない事態に陥るかも知れません。
 無理な話かもしれませんが、いっそ学校で「暴力の正しい知識」の授業を行ない暴力の正しい使い方を学ぶべきです。