切手

ぼくの切手帳。
青い革の表紙にはどこか外国の古い切手が金色のインクで描かれている。
手に取ってみると厚みこそ一センチくらいしかないものの、なかなか存在感のある立派な作りをしている。
ちょっと小ぶりの写真アルバムくらいの大きさだ。
数年前に父親に買ってもらった物だった。
ページを開くと、少し懐かしい前に開催されたオリンピックの記念切手だとか、いつかの万博の記念切手の切手が並んでいたりする。
見返り美人復刻版なんかが混ざってるのはいったい何のつもりでかったのだったっけか。
所々父親が海外に出張したときにせがんで買ってきてもらった外国の切手が薄いシート。
ヨーロッパの鉄道の絵が描かれているのが欲しくて出張の時はいつも国際電話で「電車の」「電車の」って口癖みたいに言っていたん。
あれは素直に寂しいなんて言えない年頃の男の子のわかりずらい照れ隠しだったんだけど父親は気がついてたんだかどうなんだか。
でも、ページをめくっていくと切手は本の半分ぐらいで、数が少なくなったかと思うと突然無くなってしまう。
そこからのページにはもう切手は挟み込まれていない。
……飽きちゃったんだ。