ロボット

五人ロボットが来ていた。
五人?
それじゃ人間みたいだ。
五体と呼びなよ、と彼女は攻撃的な声でいった。
五体か……それじゃまるで死体みたいじゃないか、と僕は思った。
「自分と他人を分かつ境界線は本当にはっきりしたものなの」
挑戦的に彼女は言った。
「ロボットにはそれがないの、彼らには外側も内側も一緒じゃない。……違うのよ。クラゲは透明で中身もすかすかでほとんど水みたいに見えるけど、それでも生きているのは境界線が有るからよ。そこが違うの……そこが違うだけでクラゲは生きているの、水じゃないの、生き物なの、薄皮一枚の細胞膜だけで必死で世界と自分を隔ててるの、そこで死ぬまで戦い続けるのよ。」
突然、嘆願的な声で彼女は言った。
「……あなたも死ぬまで戦い続けなさいよ、悟ったような顔してんじゃないわよ、戦争よ、あなたの一部が奪われたのよ……無抵抗なんて絶対に許さない。」
僕の右腕を取り外した次の日の事だった。
……クラゲが一匹、やがて海流になすすべもなく流されて、叫んでも響かないような広い海の中空で孤独に死ぬまで戦いを続けている。